深い暗闇の中で明るく灯る提燈の灯・…。
そこは小さな屋台だった。
古いが小奇麗に整備された木製の屋台…。
そして一つの古い長板・・。

そんな静かで小さな屋台の椅子に腰掛けるのは 二つの人影だった。



「いやぁ・・驚いたよ。まさかこんな所で『あんた』と会うなんて思いもしなかったぜ・・・」

そうのらりくらりと言ったのは銀時だった。
銀時はお猪口に酒を注ぎたすとそれを口に運んで ニヤッと笑う。

「今日は一人?妹さん・・・うららちゃんだっけ は居ないの?」

「ええ・・・私一人です」

そう答えたのは 一人の女性。
上質の着物を身に付けて長い栗毛色の髪を結い、その顔には大きな眼鏡をかけている。
その眼鏡越しでも娘が美しい顔立ちをしているのは見て取れた。

「ちょっと意外だよ。あんたってこういう所来るように見えないからさ・・・ねぇきららさん」
銀時はそう笑ってまた一口酒を飲んだ。
「あ・・酒は飲めんの?」

「いえ・・私はこれでいいんです」
きららはそうぽつりと零す。そんなきららの前にはウーロン茶が置かれている。
だがそこには手を付けた様子がなかった。

銀時はそれを眼の端に移しながらもまた一口酒を飲む。

外には気持ちの良い風が吹いていた。
屋台のオヤジは少し離れた所に腰をかけ、煙草をふかし新聞に目を通している。


しばしの沈黙が二人の間に流れた。


銀時はまた 酒を飲んだ…。

まるでそれが合図にしたかのように、突如きららが口を開いた。

「『偶然』なんかじゃ ないのでしょう・・・」

静かに、だがはっきりと言われた言葉に銀時の手が止まる。


「あなたは 私とこうして話す機会を ずっと狙っていたのでしょう」


そうきららは 初めて銀時へと視線を向けた。
その瞳には 強い 意思・・・



「『新八』さんの事を・・・話す為に・・・」




■酒香る 闇の花に■





はっきりと告げられたその言葉に、銀時は何も言わなかった。
手に持ったお猪口を持ったまま、わずかに揺れる液体を見つめている。


―――暫くして

「・・・やっぱ『女』ってすげぇなぁ・・・。その勘の鋭さって奴ぁ男には真似できねぇな・・・」

そう銀時は一人で苦笑する。
そしてまた酒を煽った。


先程からやけに酒を煽る…。
それに気づきながらも、きららは何も言わず銀時を見た。

銀時は視線を合わそうとはしない…。
その大きな指先でお猪口を握り、液体を揺すり続ける。

「・・・・あんたさ・・・可愛いと思うよ・・・」

不意に銀時が言った。
だが、きららの表情は変わらない・・。

「家も金持って話だしぃ・・・顔もいいしぃ眼鏡っ子だしぃ・・・挙句におしとやかでそのくせ強い意志があって」

銀時はそうお猪口を揺すりながら続ける。

「なんかいろんなタイプにすげー受けそう・・。なんてーのオタク系から紳士系まで?
いやいや、まぁ何が言いたいかっていうと、あんたみたいな子タイプって男 たくさんいると思うわけよ・・・俺は」


茶化すように言われても、きららは何も返さない。


「なんてーかさぁ・・・あんたって今までは引きこもって周りと触れ合ってこなかったから まだ知らないだけでさぁ・・
世界ってホント広いわけよ・・。んで自分がどんだけいい女かってのも あんたわかってないわけよ。
銀さんはそれは 勿体ねぇって思うわけよ。ホントだよ これマジだから お天気おねーさんに誓うから」


銀時はそう言って また酒をあおる。



「だからさぁ・・・・・だからよぉ」


酒を飲みほし、残りの酒を注ぎたしながら 銀時は低く呟いた。




「・…新八は あんたとは合わねぇよ」



その言葉にきららの表情は変わらない…。
ただ黙ったまま銀時を見る。


「・・・あんたまださぁ世間ってのを知らないと思うね・・・。俺。
世界が狭いよ・・・。てか狭すぎ!だってね世の中の男は『新八』だけじゃないしぃ・・・。
てかさ、やめとけって・・。」

「・・・・・・」

「だいたいさぁ・・まぁ何?上司の俺が言うのもなんだけど、新ちゃんって女の子にモテないんだよねこれ・・・
まぁ理由はさぁ、まずあいつダ眼鏡だし、地味だしツッコミしか才能ないし
料理とか裁縫とか掃除とか そんなんばっかり得意だしぃ・・・もうどこぞの主婦ですかぁ?って感じでよぉ・・・」

「・・・」

「小うるさい小姑ついてるし、いろいろデンジャラスな世渡りしてるし、てか世渡り下手だしよぉ・・・」
「・・・」

「…てかさぁ 俺って結構顔広いんだよねこれが・・・。ぶっちゃけ歌舞伎町制覇してるみたいな?
そうだ 仕事としていい男紹介してやろうか!実はさぁ 俺あのホストクラブ『高天原』とかにも顔聞くんだぜ?
あとはまぁ芋しか居ないけどよぉ・・・真撰組とか幕府関係とか ちょっとスリリングな恋愛お望みなら攘夷関係者とか?
あっテレビ関係者でもいけるぜ?寺門お通関係だけど・・・。あってかサービスしちゃうみたいな?
特別サービスでいい男紹介してやるぜ ほれ銀さんそういうのすごい得意だしぃ・・・?」


「私は 新八さんが好きです」


はっきりとした声が響いた。


「一時の気の迷いじゃありません。初めて文通して…手紙のやり取りをして…そして会うことができて
新八さんの顔を見て、どういう人か知って・…知れば知るほど 私は新八さんが好きになりました」

銀時は酒を注ぐ・・・。
一度もきららを見ること無く・・・。

「あのさぁきららちゃん・・・それって『すりこみ』に近くね?
ほら あれだよ・・生まれてきたらすぐそばにいる奴を親と思いこむあれ・・・いやあれだと思うよ俺・・・思い込みだって」

「違います。私は新八さんが好きです・・・。」

「・・・だからそれはぁ・・」

「だって私『嫉妬』しましたから・・・。
まだ新八さんが勘違いしているとき、・・新八さんが私を見てくれないと寂しくて…うららちゃんに取られるのだってとても嫌で」

「だぁ・・かぁ らぁ それって『すりこみ』!てか妄想?・・・ほらあれだよ・・・小説とか読んでてさぁ・・・・こうまるで自分の事みたいに思っちゃうあれ!なんて言ったっけ・・・・」


「新八さんが好きです・・・」

「・・あのぉ人の話聞いてますぅ?・」

「新八さんの事が好きです・・・私もっと新八さんの事が知りたいんです。 新八さんと一緒にいたいんです・・私」

きららはぎゅっと着物を握る。

「初めてなんです・・。こんなに人を好きになるの・・・。妄想なんかじゃありません・・・勘違いでもない」

「・・・・」

「こんな世の中で『手紙』なんて笑う人もいるかもしれない・・・。でも構わないんです。
私には新八さんからくる手紙が何よりもうれしくて・・・・何よりも大切で・・・」

銀時が無言のまま酒を注ぐ・・・。

「今もそう・・・。手紙が来て・・そして今まで知らなかった新八さんを知っていく度に…ますます好きになっていくんです・・・」

「・・・」


「新八さんの純粋なところとか・・・まっすぐなところとかお人よしの所とか…一生懸命なところとか…」

「・・・でもまだ『それだけ』だろ?
あんた全然 知らないでしょ・・・新八の事・・。まだ会って数か月だしさぁ・・・・」


「人を好きになるのに時間なんて関係ありません…。私は新八さんが好きなんです」


ぱきぃッ
不意に鈍い音がした・・・。


と同時に 銀時の指から ツゥと何かが流れ落ちる。
それは一筋の血…。

手には割れたお猪口が握られ、零れた酒がじんわりと提灯に照らされている・・・。



「・・・どうして新八なんだよ・・」



銀時の低い声がした。


「どうして 新八を・・・好きになんかなったんだよ・・・」



低く 擦れる言葉にきららは何も言わない・・・。


「あんたなら・・・いくらだって男を見つけられるだろ…?」

「・・・・」

「・・・・・・・なのになんで 新八に手紙を送った・・・・?
どうして新八に返事を出した?新八に会った・・・?」


銀時の声は淡々としていたが、そこに滲む感情は鋭くきららを突き刺した。


「新八はあんたの言うとおりに、単純でバカでわかりやすくてまっすぐで・・・一生懸命で・・・・・・・」

銀時の指が…微かに震える。


「普段『女』にモてないから・・・『女』に言われたことすぐ本気にして周りが見えなくなっちまう奴なのに・・・・」



「なのにあんた・・・なんで余計なことしてんだよ・・。」



銀時の声は低く 擦れる・・。


「なんで 新八の前に現れたんだよ・・・・・」



沈黙が流れた・・・・・・・・。
零れた酒が…木の机にじわじわと染み込んでいく・・。

そして 銀時の指から流れ落ちる血が…ポタ ポタと酒に滲む。


「・・・頼むよ」


低く…ぞっと背筋が凍るような声が闇夜に響く…。


「・・・あんた・・・新八の前から消えてくれよ・・・」



何かを抑えるような声音で…続けられていく言葉・・・


「もうおもっきり酷くあいつの事振って 居なくなってくれよ・・・」




「―――それはできません」


きららは答えた。

はっきりと・・・



銀時の唇が どこか皮肉気に歪む。


「じゃあさ・・・『俺』があんたを殺す前に・・俺達の前から消えろよ・・」

「――嫌です」

「消えてくれよ」

「嫌です」




ドン・・・ッ!と鈍く、机が揺れた。



「――ッ新八じゃなくたっていいだろ!?」


呻くように・・叫ぶの堪えるようにその声は潰れる。


「あんたにはいくらでも男が現れる…保証するよ・・・だからッ・・・」

「いいえ・・・新八さんが好きなんです・・・誰よりも好きなんです」








「――んとによぉ・・・あんたずるいよなぁ」



突如・・・銀時から放たれた異質な空気にもきららは表情を変えなかった。



「・・・銀さん・・・私が怖いんですか・・・?」


その問いに、くっと銀時が笑う。


「・・・『怖い』・・?ああ怖いとも・・・怖くて怖くてたまんねーよ・・・」


そして自嘲気味顔を歪めたまま続ける。


「だってあんたは・・・『女』だからなぁ・・・・・・・」


そう向けられた視線は 暗い感情の闇が垣間見えた。


「『女』ってやぁ・・・・本当におっかねぇよ・・・。男にとっては最大の『敵』だぜ・・・。
すぐに思考を奪われて、心も染められて…なんにもできなくなっちまう…。
…とくにいい女は大敵だな…。男は簡単に人生を踏み外して 登ってもこれねぇ・・
力こそ無いが 女が本気になったら男はとても敵わねぇ・・・」


くつくつと・・・自嘲気味な笑いが続く。


「だってよぉ〜・・・俺がどんなに『好きだ』って言っても ぜんぜん意味ねーんだよ・・・。『アイツ』にとってはどこ吹く風だ・・・。
どんなに言葉で言ったって行動したって駄目だ…。新八の中で何も変わらない。
俺は『銀さん』のまんま。
それ以上でもそれ以下でもない・・・。それ以上の存在にならない・・・。」



「だけど『女』が言うとさ・・・それがどんな些細なことでもすぐ反応すんだよ・・・。アイツ・・。
いかにも嘘って分かることでも、顔真っ赤にしてさぁ…。んですぐ本気にして周り見えなくなっちまってよぉ・・・・

・・・神様はひでぇよな・・不公平じゃねーか・・
俺が何千回何万回言ったって伝わんないけど、あんたはたった一回で伝わっちまうんだからよぉ・・・」



だから 『女』は怖ぇ・・と彼は微かに呟く・・。




「新八さんと文通しているときから・・・感じていたことがあったんです・・。」


唐突にきららは切り出した…。

「あの手紙…たくさんの方達がいろんな手紙を書いてくれたけれど・・・・・すぐわかりました・・・・・・・・・・・」

きららの眼がまっすぐに銀時を射抜く・・・。


「・・・私と新八さんが文通をすることを望んでいない人がいるのだと・・・・・」



「銀さん・・・あなたなんでしょう?」



銀時はその口を歪ませる。


「全部ばれてんのね・・・これ」
「あなたは本当は、文通なんてすぐに辞めさせたかった・・・。もちろん会うことなんて許せなかった・・・
だから沖田さんの写真を同封したのでしょう・・。そして万が一の時は新八さんの目の前で 全てを壊すつもりでいたんでしょう・・・?」


「そこまでわかってんなら―――ついでに教えてやる・・・」



銀時はなんとも言えない笑みをその顔に浮かべる。




「実は俺さぁ・・・新ちゃんの事犯しちゃったんだ・・」



どこまでも、愉快そうに楽しそうに その声は続けた。


「『犯す』って言うか…抱いちゃったわけ・・。
君の好きな新八君は男に犯されちゃってるワケ・・・ごめんねぇ きららさんよ」


銀時はそうやってその赤茶の眼を細める。
まるで最後の切り札を出した…と言っているようだ。



「新ちゃん可愛いから 我慢できなくてさぁ・・・。あっこれ新八には言わないでね 言ったらあいつ憤死しちゃうから・・・」


そうくすくすと 銀時は笑う。

その銀時の笑みに…きららは表情を変えずに答えた。



「知っています・・・・そんなのこと」

「・・あら?そうなの?」


おどけた様に眼を見開く男を、きららは静かに見つめる。


「知っています・・・だってずっと見てますから・・・」

「へ〜だったら引いたでしょ?ありえねぇ〜って思うでしょ?気持も冷めるだろ?」
「・・・・・・・・・冷めません」

だって・・・ときららは銀時を見た。


「新八さんは あなたのモノではないと・・わかるもの」


その言葉に、銀時の顔が強張った…。


「あなたは新八さんの体を強引に汚しただけだわ・・・・・新八さんの心にはまるで手が届いていない」


静かで鋭い声は、深い闇の中で響き、融けた。



「強引に体だけ手に入れて…そこに自分を刻みこんで…そうして逃がさないように縛り付けて…」


視線を外さず 少女の強い声は続く


「それで…新八さんがあなたのモノになるとでも思っているのですか・・・?」


その言葉に ピくりと銀時の指が動く。


「・・・『答え』はでているのでしょう・・?だからあなたはこうして・・・私を遠ざけようとするのではないの?」
「・・・きららちゃんよぉ」
「私を新八さんから離して いえ、あなたの気に入らない全てのモノから遠ざけて 閉じ込めて・・・そんなことで」

「――うるせぇんだよッ!」

突如銀時は声を上げた

きららが今まで見たことも無いような激しい表情をした銀時が 目の前にいた。


「・・・お前に…なにがわかるってんだよッ」
「あなたは『男』だわ・・」
「だからなんだよ・・・今時男も女も関係ねーんだよ!俺の知り合いに女同士なのに周りを巻き込んで、結婚騒動起こした迷惑な奴らもいるんだよ!」

「あなたはそうでも・・・新八さんは違うわ・・」
「黙りやがれ・・・ッ・・」
「私にはわかります・・・だって私・・新八さんをずっと見てますから・・・」
「黙れ!」

「そして私はずっと知ってました・・・。あなたが新八さんを好きだということ・・・・・・・」

「・・・消えろよ・・・新八の前から消えろ!・・・」
「でも私はあなたに消えてほしいとは思わない・・・新八さんは今まで通り万屋で仕事をしていても気にしません」
「消えろッ!」

「だってあなたと新八さんが『結ばれる』ことなんて ありえないから」

「・・・・・ッ!!」

「あなたは『男』…。たとえ何があっても新八さんはあなたをそのように想わない…。
新八さんにとっての あなたは・・・家族であり仲間であり、憧れの侍で・・」
「――るさい・・・うるさい!!!」

「そして私は『女』です・・。だからあなたとはちがう方法で新八さんを手に入れることができるから・・・」
「・・・ッ!」

「・・・あなたはそれが怖いんでしょ・・・?」

「・・」

「新八さんが私を好きになって 結婚して 子を成す・・・それが怖いんでしょ?」

「・・・ッ」

その言葉に銀時の瞳が逸らされる。

「『法律』の元、新八さんが私の『モノ』と証明されるのが怖いんでしょう・・・?
新八さんの心が証明されるのが怖いんでしょう・・・?
あんな紙切れでもあなたには永遠に手に入らないものだもの・・・・。だからあなたは怖いんだわ
証明されてしまうのが嫌なのよ・・・・」

「――――――はっ・・ああそうだな・・嫌だよ胸糞わりったらないな・・・そんなもの」

銀時が吐き捨てる。


「そんなに新八さんが好き・・・?」


その問いに、男の瞳が揺れた…。
その顔が…答えを浮かび上がらせる…。

それを見て 言う


「―――ならそっくりそのままあのセリフを返すわ・・・。
『新八さんはやめて・・・。ほかの女性を紹介しますから・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「黙れよ…っ」
「そうでしょ・・・。私も同じです・・・。」
「・・・」

「でも仕方がないわ・・・。だってそうでしょう?あなたは男で私は女・・・。でも私だって決して得られないものがある。
それは銀さん・・・新八さんがあなたに向ける感情・・そして『絆』です・・・。
家族であり、頼れる先輩であり 憧れの侍でもある そこに生まれた永遠の絆・・。
それは女の私には決して得られないものだわ・・。
でも私はそれを受け入れます・・・。だからあなたも受け入れてください」

「嫌だ…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌だ・」

「あなたがどうしようと 最後に決めるのは新八さんだわ・・・」

「―――ッ・・・」


「・・私はあなたから新八さんを奪おうとは思わない・・・。でも・・渡さない・・・。
私は私のやり方で新八さんとの『絆』を得る・・・あなたには決してできない方法で・・・」


「――ッ!・・・新八はやめろよ・・・新八はやめてくれよ・・・頼むからよぉ・・・」


銀時が顔を覆う…。
その声が悲痛なほどに擦れる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・新八はやめてくれよ・・・・新八だけはやめてくれよ」


壊れたように繰り返すその男を…きららは静かに見上げた。



「・・・法律で新八さんを取られるのがそんなに怖いのですが・・・?あなた達の間では何も変わらないのに・・・。」




****


静かな夜

暗い部屋でぴくりと新八の体が動いた

「・・ん・・あれ・・・銀さん?」

新八は眠たげに眼を擦って体を起こす。
そこには電気もつけず立つ銀時の姿があった。
ふあぁと欠伸をしながら 新八は立ち上がる

「もぅ・・ほんとあんたはマダオだなぁ・・。今何時だと思ってんですか!?
いくら夜兎族っていったって神楽ちゃんはまだ小さな女の子なんですからね!こんな夜遅くまで飲みに行くなら一言連絡入れてくださいよ!」

そう一気にまくしたてるが、銀時からの返事はない。
月の光で銀時の口元だけが見えるが、銀時が笑ってないということしかわからなかった。

「どうしたんですか・・?」

新八が首を傾げる。
それでも銀時は何もいわなかった。

「銀さん・・?」

その時、不意に電話の鳴る音がした。
新八が反射的に駆けだす。
と同時に、その体が強い力で抱きしめられる。

電話はすぐ・・止んだ


「銀・・・」
「なぁ・・新八ぃ」


銀時の 低く擦れた声がした。

「ちょっと銀さんいた・・・」
「銀さん束縛強いタイプだから・・・・縛るタイプだからさぁ・・・」


それと同時に 唇が首筋に触れるのを感じ 新八の体が強張る。



「だから離してなんかやんねーから・・・」

「銀さ…」



「『逃げたい』って言ったら・・・俺お前の事殺しちゃうよ・・・許せねぇ―から」
「・・・・・・」
「新八ぃ・・・傍にいてよ・・・ずっとずっと銀さんの傍にいろや・・・」




「―――あのねぇ」

新八がうんざりしたようなにため息を吐く。

「恥ずかしいから金輪際言わないからよく聞いとけよ天パ!!『ボクはずっと万屋にいますからね!家族と思ってくれていいですからね!!』 以上!」
真っ赤になりながらそう叫ぶ顔を銀時は切なく見る。

「『家族』・・・?新ちゃんにとって俺って家族?家族ってどのくらい大切?新ちゃんにとって一番大事?」
「・・・はい?」
「・・・」
「一番っていうか・・・家族って何よりも大切な人達の事なんですよ!何度も言わせないでください!!」
「本当に傍にいる?ずっと俺の隣にいる??本当に本当かコノヤロー?お天気おネイサンに誓える?もし破ったら銀さんの言うこと何でも聞く?エロいこととかするからね」
「ばっ…!何言ってんだあんた・・・。だいたいちょっとおセンチになってんじゃねーよ !気持ち悪いだろーが!」

そう喚く新八を・・・強く強く抱きしめる。



「新八ぃ・・・銀さん本当に新八が好きだよ もう愛しちゃってるよ 本当だよ」


「はいはい・・・」

抱きしめながら・・・息が詰まる・・・

「本当だから…ね〜聞いてる新ちゃん?銀さんはぁ・・・」

「はいはい」

「ね〜ね〜・・・新ちゃん」



***


「お姉ちゃんどうしたの?顔色悪いよ」

心配そうにのぞきこんでくる妹に、きららは困ったように笑う。


「どうしたの?なにかあった?」

訝しげに聞いてくるうららに、きららはぽつりと呟いた。

「私・・・変りたいの・・・・」
「え・・・?」
「もう 諦めて嘆いて ただ待ち続けているのは嫌だから・・・」



そう言ったきららは微笑んだ。



END



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