「なぁ・・・もしかしてお前の母ちゃんてべっぴんだった?」


そう唐突に問いかけると新八は叩きを持つ手を止めて、その大きな黒い眼をきょとんと丸くした。

「なんですか・・・?突然」
「いやさぁ・・・何となくそう思ってさ」

頭をポリポリとかきながら銀時はどよんと新八を見る。

「で・・・どうなの?そこんとこ・・・」

「いや・・・どうなの?って聞かれても・・・」

しろもどもろに答えながらも、新八はどこか照れくさそうに頬を染める。

「まぁ・・・その自分の母親の事を言うのもあれなんですけど…綺麗な人でしたよ」
「あ〜・・」

銀時はそう相槌を打ち、

「ちなみにねーちゃんは母ちゃん似?」
「あ〜そうですね。姉上は母上の若い時にそっくりだそうですよ。あっでも眼は父上に似てるって言われてました・・・」
「ほ〜なるほどねぇ・・・。てぇことはさぁ・・・新ちゃんは母ちゃん似ってことだなぁ」
「・・え?」

新八の眼がまたきょとんと丸くなる。

「だってよぉ・・お前とねーちゃんってそっくりじゃんよぉ。てぇ、ことはお前は必然的に母ちゃん似ってことだろーが」
「え・・?あぁ・・・そう言われればそう・・・ですね」

そうどこかポカンとしたように呟いたのち・・・

「あ・・・でもそういえば、近所の人とか父上とかには、母上の小さい頃にそっくりだってよく言われてました・・・」

と、新八はそう照れくさそうに笑う。

「なんでも笑った顔とか似てるんだそうです・・・。あと目元と口元が・・まぁボクは姉上と違って単純なパーツでできてますけどね」
「ふ〜ん〜・・・・」

銀時はそのままじっと上から下まで ゆっくりと視線を動かして新八の顔を検分する。

「なるほどねぇ・・・」


かくゆう新八はすでにこの話題に飽きたようで、またぱたぱたと叩き掃除を開始した。





【 心満ちる 深い闇の中で 】



手際よく掃除をこなすその後ろ姿を、銀時の視線がゆっくりと追っていく。

そしておもむろにひとり頷く…。

この少年は・・・割烹着姿が恐ろしく似合うと思う…。

というか・・・こうハタキを持ち掃除に精を出す姿が 怖いほど絵になっている。

(どこぞの可愛い新妻ですかぁ・・・この子はぁ・・・)

銀時はそう、得体のしれない笑みを浮かべる。


(こんな風にしてれば、ほんと〜に『大人しくていじめられっ子』なんだけどねぇ・・・・)




そう・・――・新八は…地味だ。
少なくと目立つタイプではない・・・・。


この国の人間特有の 黒髪に、黒い眼。
普段着は飾り気のない質素な着物。
あげくに、眼鏡をかけこうして家事にかまける姿は あまりに平凡で地味である。


――だが、銀時は知っている。

この少年がとんだ『食わせモノ』なのだということを・・・・。



『貧弱』だなんて・・・とんでもない。

『真面目な貧弱坊や』 を絵に描いたような姿をしているくせに、実はそん所そこらのチンピラより、よほど強い。

なにせ、剣術道場の当主なのだ。
本当は身体も人並み以上に鍛えられている。

だから見た目に騙されて、新八を甘く見ると痛い目にあう・・・。



そして一見 果てしなく 『地味で目立たない』容姿にも秘密がある・・・


(・・・『単純なパーツで作られている』だぁ・・・?冗談いってんじゃねぇーよ・・・)


銀時はそう一人・・・訳知り顔でにやぁと笑う。

時間を共にするほど…近くにいればいるほど分かる・・・・。


その眼鏡に隠されて気づく者は少ないが・・・・



(本当は・・・すげー『美少女』なんだよねぇ・・・新ちゃんは・・)




そう。新八は・・・・俗に言う『女顔』だ。

それも美人な姉によく似ていて、かなり整った綺麗な顔立ちをしている。


・・・お妙が『子供のころ 妹が欲しくて女の子の格好をさせていた』というのも納得がいく・・・。


現にカマザイルの仕事の為に『パチ恵』に変身すると あまりにも違和感がない。
むしろ、そんじょそこらの女共よりも・・・断然に映える・・・。


(・・・隠れた原石?磨けば光るタイプ・・?いや・・ちげーなぁ・・・ありゃぁ・・・)



そう思考する銀時の瞳には、どこか愉しげな色が浮かぶ。



(・・・・・・・・『魔石』だな・・・・・)



そう 石ころでも 宝石でもない・・・。
人を惹きつける魔力をもった…魔性の石…。



・・・・・・・・新八を見続けて 気づいたことがある。

この少年は稀に・・・・はっと目を奪うほどの 強烈な『空気』を纏うことがある・・・。

それが ある種の『色気』…だと最近気づいた。

鳥肌が経つような・・・・雄を刺激するような…視線を奪うような・・・・そんな『色気』・・・・。

それは夜の街で男に媚びる女とは違う…。でも女達を惑わす高天原のホストの部類とも違う・・・。
もちろんAV女優などのエロさとも違う・・・。

もっと上質な・・・・それこそ 男の真髄を揺さぶるような そんな『色気』だ…。

あえて例えるのならば・・・・吉原の花魁…日輪の色気に近い・・・。


日輪は夜兎の王が…誰の手も届かぬ場所に長年捕らえていた極上の女だ…。
あれほどの男が我を見失い 二度と逃げださぬようにと その足さえも奪うという無慈悲な行為に及んでまでも その手に抱こうとした。


あの日輪が纏う空気と新八のそれは、良く似ていた。


(だいたい・・・あの花魁の衣装を着ていても怖いくらい違和感ねーってのがすでにおかしいんだよ・・だって『男の子』だよ?新ちゃんは)

花魁の上質の女が、どんなに地味で質素な着物を纏ったとしても、その体に纏いつくあの特殊な空気までは誤魔化せはしない…。

・・・新八もそうだ。
・・・一見 地味で目立たない風を装っているくせに

その『地味』な仮面の下に 何者をも『虜』にさせる 強烈な花を隠している。



一度その香りを嗅いだ人間は 囚われる・・・・。
今の…銀時のように…。



粘りつく様な視線で新八を追いながら、銀時はうっとりと 得体のしれない表情をする。



(・・しかもこいつぁ・・・あんなに『清楚』な顔をしてるくせに・・・・とんだ暴れん坊将軍なんだよなぁ・・・)


それこそが この少年の『怖い』所だと、銀時は思う…。


表面上・・・虫も殺さぬような大人しい純情そうな顔をしているくせに・・・


(・・『気に入らない奴』には・・・・噛みついてきやがるんだからよぉ・・・)



日輪もそうだった・・・。



あの女は決して 王に振り向こうとしなかった。

足を奪われ…光を奪われ 自由を奪われ…それでも尚… 男の思うままにはならなかった…。

いつでも、あの眼は鋭かった…。
いつでも 男を見なかった・・・。


たとえ自分の命が握られたとしても…・媚びなかった。


代わりに向けるのは…あのきつい眼・・・・・・・・・・・・・・。


その眼は・・・・・・・・・・・・・・・新八の目だ。


ぺろり・・・と 銀時は無意識に唇を嘗めた。


新八と日輪は きっと同じ部類の人間だ…。

消して誰にも汚させない…聖域を持っている。

そしてその『聖域』を知った者は・・・・・・・気が狂ったかのようにのめり込んでいく・・。

そしてもしあの眼が 己だけを見るようになったら・・・と愚かな想像に夢を膨らませる。

だが・・その時の『快感』と言ったら・・・言葉で表すことなど 出来ない・・。


誰にも触れさせない『聖域』だからこそ、汚してみたくなるのだ…。
自分の色を注ぎこんで、ぐちゃぐちゃに掻きまわして…そして支配したくなる。


だが・・『聖域』を守る為に、日輪も新八も その形の良い口の中に…鋭い牙を隠し持っている。

そして『侵入者』には、容赦なく牙をむき、噛みつく獰猛さを兼ね備えているのだ・・・。



だが、その気高さと一筋縄ではいかないところが・・・・堪らない…。



もともと銀時は、積極的な女 が嫌いだ。
自分の性格的に 追われるより追う方が断然好みなのである。

(あの 『ドS』と似たかよったかなんだよなぁ・・俺も・・・)

自分からすり寄ってくる女は 興味がない…。
いくら『S』だと自覚していても、自覚のある『M』な奴には少しも心が動かない…。
だが・・・手に入れようとしても逃げる そういうタイプにことごとくのめり込む…。


(やばいよなぁ・・・・・銀さん ほんとメロメロ…もう中毒…)


そう 薄く笑いながらその小さな背中を視線に収める。


(気に入らない相手にはたとえ殺されても 従わねぇ・・・・・・・・・いいねぇ・・・)


普段は銀時や神楽の尻拭いの為に 頭を下げ駆け回っているくせに
自分の誇りを汚される時は、何があっても頭を下げない…。

いい例に宇宙海賊春雨に攫われて、敵に囲まれた時・・・・・・・・・・新八は一度も命乞いしなかった。


周り中全て敵に囲まれ、武器も無く、手の自由すら奪われた…絶対的危険な状態ですら
その口から 反抗の言葉しか吐かなかった。



『ここは侍の国だぞ!お前らなんか出ていけッ!』


そう 相手を睨んだ眼を見た瞬間…鳥肌がたった。





普段のひ弱な外見からは想像もできない…その反抗的な眼…。


そこに纏う…誇りの高さと強烈な強さ・・・・。
その強さは…銀時が纏う無骨で荒々しいものではない。


例えるのなら・・・・・・・・桜

咲き誇り…潔く散っていくあの花は 新八そのものに思えた・・・。




…それら全てが…銀時の心を激しく揺さぶる…。

視線を惹きつけて 離さない・・・。




(・・・・それにしても普通にしてれば あんなに可愛いのになぁ・・・。
もう草食動物だよ・・てか どうみても『M』だよね・・?どっちかってーとされるがまま?みたいな感じ・・・)


そう思いながら 銀時は掃除を続ける小さな体を追っていく。


(ところがどっこい・・・中は生意気な『猫』…。
気に入らない奴は 平気で引っ掻いて逃げていく・・・・そんな奴)


大人しそうな顔をしてるくせに、繋ごうとしても するり と逃げていく…。


(そのくせ・・・気を許した奴には びっくりするくらい可愛く懐く・・・・)


己の『聖域』に触れることを許した時に見せるあの顔は・・・・・・・・…中毒になる・・。


(でも・・『相手』にはその権利を選ばせねぇ・・・・・・)


どんなに恋い焦がれても、そんなのどこ吹く風・・・。
どんな言葉も態度も 意味をなさない・・・。

どこまでもクールな 生意気な猫・・・



(・・んでもって…『気に入らない奴』には ことごとく反抗しやがる・・・・・・・例え力で追い詰めても、どんな痛みを与えても…・少しも媚びようしねぇ・・・・・・・)


例え 無理やり首輪を付けて つないだとしても

餌をやらないと 脅しても 意味がない…



(しかもそれが・・・・・・・・・『無自覚』ってんだから おっかねぇ・・・)



口を覆い・・・思わずにやける口元を隠す・・・。



(ちなみに俺は・・・・さんざ引っ掻かれて 噛みつかれてるからなぁ・・・あ〜可哀想 俺・・)


そう自嘲気味にほくそ笑む・・・。


銀時の背中や 腕には・・・ 紅い傷が残る。
それは あの少年から与えられた抵抗の証・・・。

(・・・男ってやつぁ 本当にバカな生き物だ・・あぁ・・俺もだけどねぇ・)

くつくつと 銀時は笑む。
だって、それが体に刻まれてることに 一種の優越感に浸っているのだから・・・。



触れようとすればするほど、引っ掻かれる…。
強引に抱きしめても、少しも大人しくしようとしない…。
身を捩って、全身で拒絶を露わにする。

強引に抱いても…あの視線は絶対に…服従しない・・・。

銀時を受け入れようとしない・・・。

だから・・どんなに無理に触れても・・まるで触れた気がしない・・・。
なんども抱いたはずなのに・・・・・いつでも満たされない。

きっと 新八の心を手に入れなければ…それは満たされることがないのだろう。

だからこそ 意地でも手にいれたくなる・・・。



ぞわ・・・っと銀時の背筋に何かが走る。



独占欲と支配欲が ・・・・・・・・・・心の底から湧き上がる.



アレに触れていいのは・・・・自分だけだ。

他の誰が触れるのも・・・・・・許せない・・・

逃げるなら・・・何処までも追いすがる…。

まるで ちいさな小鹿を追いまわす 哀れな狼…。



あの少年の…反抗的な目つきはまるで麻薬のようだ・・・。
あの眼で睨まれ、そして自分に反抗すると、銀時の中の何かがごくりと喉を鳴らす…。

心の奥が 愉しげに疼く…。
そして笑みが止まらない・・・。

その顔を 歪ませてみたいと思う・・。
その口で 哀願の言葉を言わせてみたいと思う・・・。
その瞳を…自分しか見ぬように 染め抜いてみたいと切に思う・・・。

手に入れたいと 切に思う



「・・・あ〜・・・新八ぃ 銀さんお前が好きだよ」


唐突にそう囁いた。
そして唇が酷薄に笑む・・。

予想通り…振り返った新八の眼が・・まっすぐに銀時を見て・・・・・・・・瞬時に『あの色』を浮かべる。



そう この眼が 
この 自分を拒絶する この生意気な眼が

思い通りにならない この生意気な態度が


銀時を・・・・・・・・この上なく 溺れさせていく・・。



「セクハラはいい加減にしてください…訴えますよ」
「嘘じゃないもんね 銀さんマジだよ 新ちゃんが大好きで〜す」
「何言ってんですか・・・?冗談聞いてる暇はないんですけど.・・・・」
「冗談じゃねーよ マジ!お天気おねーさんに誓えるくらいマジ!・・・・・だって好きだもん 新ちゃん大好きだぜ」
「はいはい・・・暇ならパチンコでもなんでも行ってきてください・・掃除の邪魔ですから」

ほらそうだ・・・。
どんなに想いを言葉にして伝えても…態度に表しても
こいつは・・・そう呆れたように言葉を投げつけて そして何の未練もなく その視線を逸らす。


ああ・・・気に入らない・・・


その生意気な態度…。

俺を見ようとしない 目

いつまでも・・・どこまでも この手をすりぬけて逃げ出そうとする その態度・・・・・・・・





獣が騒ぐ

ごくりと 喉が鳴る・・・


ああ

欲しい 


欲しい


手に入れたい・・・


そして

あの生意気な顔を・・・・・・涙で歪ませたい。

自分しか見えなくなるように…躾けてしまいたい




音もなく席を立ち、その細腕を強引に捉える。
そのまま有無を言わさずに抱きよせて、噛みつくように口付けた。

咄嗟に抵抗する腕はあまりに非力で 銀時を跳ねのけるにはあまりに弱い。

荒々しく口付けて、容赦なく 舌を差し入れる。
ワザと厭らしい音を立てて口を犯して、新八の逃げる舌を 乱暴に吸い上げる。

次の瞬間――頬に鋭い痛みが走る

新八の手が 激しく銀時の頬を打ったからだ。

そして眼に入る…その眼。

眉をよせ、睨みつけてくる 大きく黒い 眼。

(ほぅら・・・そうだ・・・『気に入らない』奴には こうして容赦なく引っ掻いてきやがる…)

銀時の眼は どこか愉しげに細まる。


(こんな不利な状態で…逃げられる状態じゃないってわかってるくせに…ことごとく拒絶しやがって…)


自分を射抜く…その強い眼・・・。
その視線に 何度でも貫かれたい…。
その視線を その態度を見る度に…感じる度に




新八に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ちていく



首筋が ざわぁ・・っと騒いだ。
全身の血潮が喚く…。喉が鳴る。


興奮する
愉しい
心が 湧き踊る



この眼を 屈服させたい・・・
この顔を 歪ませたい

この少年を 自分のモノにしたい・・・。



「離せ!!変態ッ!!」


そう叫ぶ声が…酷く心地よい。
赤く染まり、震えているくせに それでも抵抗するその姿が あまりにも愛しかった。

「マダオ!!離せ!!」

憎らしい事しか言わないその唇が…赤く濡れて 酷く誘う。

「じゃあ・・逃げてみれば?できないくせにぃ・・・」

そう言うとカッと瞳を見開く。
同時に激しい力で抵抗してくる。
それをなんなく抑え込む。弱い…弱くて細くて なのに絶対に屈しないこの態度・・・!


「ほぅら?逃げてみれば?ねぇ?やってみてよ・・じゃなきゃ『また』犯されるよぉ・・新ちゃ・・」

「・・黙れッ…」

次の瞬間 鋭い視線が銀時を射抜く・・・




「――ボクに・・・触るなッ」




その言葉に・・・


カッと 頭に血が上った・・・。

脳から 何かが強烈に溢れだした。



触るな・・・・・だって?


この生意気な ガキ・・・・・・・・・。


この状態で・・この空気で…この俺に向かって・・・よくそんな言葉を吐けるものだ・・・



自分が逃げられないのは百も承知
強引に抱かれるのも わかってる

今…優位にいるのは 完全に俺・・・

お前は組み敷かれて 抵抗も虚しく されるがままに俺に抱かれるのを待つだけの 場面


本来ならば・・・泣き叫んで哀願するのが関の山

なのに・・・

ここで 



―――『命令』するか・・・




「・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ・・」



でも…そんなお前に  



・・・・・・・・・・・・・俺は ますます落ちていく・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ・・・愛してる・・・愛してる 新八ぃ」



そう・・・歪んだ笑みと共に 言葉が溢れた。



腕を拘束したまま、その細い首筋にゆっくり 味わうように舌を這わした。
その瞬間 その体がひくりと 揺れる。
そのまま唇を動かして、嬲り上げていくと その体は更にひくりひくりと震える。

それでも 絶対に声を上げようとしない・


ちらりと 視線をあげると そこには 唇を噛みしめて 声を殺す新八の顔がある・・。

眉をしかめ それでも隠せず頬が紅に染まっている・・。
湧き上がる快感の波に必死に逆らうその姿・・・その顔


(・・・・・・・・・たまんねぇ・・・)


銀時の心が 激しい何かに突き上げられる。
理性も思考も全て壊れて…欲望のままに しゃぶり尽す様に 新八を抱いてしまいたい・・・。


そう
もっともっと追い詰めて…その生意気に抵抗する顔を 壊したい・・。
快感におぼれさせて 悔しそうに歪むその顔を 見たい。

全てを自分で埋めてしまいたい。
その口で縋られて見たい・・名前を呼ばれたい
許しを請われてみたい・・・。愛を囁かれて見たい


どれも 容易には 叶わないと知っているけれど・・・






「新八・・・しんぱちぃ・・・しんぱち しんぱちぃ・・・・」


壊れたように その名を呼ぶ・・。
心も思考もドロドロに溶かされて その名しか口に出来ない・・・。


「・・・・・・・・・・・・ッ!!」


だが突然 唐突に銀時は顔をしかめ、体を離した。
その隙をついて、腕の中の『子猫』が 勢いよく逃げた。


それを視線で追いながら、 笑む・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・いってぇ…酷いじゃない…新八く〜ん」

そう擦った銀時の指先には 紅い鮮血が付着する・・・。

「唇噛むなんて 新ちゃんたら激しいのね」

冗談めかして言う…。だが目の前の少年は 肩で息をしながら こちらを睨みつける。

「あら・・・なにそれ?てか・・・いつのまに?」

そこには 銀時の木刀を構える新八がいた。

白夜叉と恐れられた銀時の唇を噛み、その獲物を奪い逃げるなんて たいそうなじゃじゃ馬だ。


にやぁ・・・と銀時の唇が歪む・・・。


「―――来るな!変態パーマ!!」

はだけた着物が 異常なほどに艶めかしく新八の姿を映す。
その間に見える 紅い印が 鳥肌が経つほど エロい…。

思わず舌舐めずりした。

可愛く ひ弱で 貧弱で…なのに 一筋縄ではいかないこの獲物に

骨の髄まで 夢中になる・・・



手に入れたいと 強く想う・・・。



「・・・悪かった悪かった・・・今日はここで終わりますぅ」



不意にそう言って、銀時はどかっとソファに腰掛ける。



「あ〜まずい・・・新ちゃんエロすぎ・・。もう銀さんの『息子』大変・・・見てこれ」
「うるせー!気持ちわり―んだよ!!てか何!?このノリ!この流れ!?」

そう喚く新八に 銀時は笑んだ。

「だって俺…新ちゃん好きだから 嫌われたくないからさぁ・・・今ここでヤッたら新ちゃんマジで切れそうだからさぁ・・だから我慢!すげくね?銀さん 紳士ぃv」
「ぜ・・・全然紳士じゃねーんだよ!!何言ってんのぉぉお!」


たく・・・!

と怒りながら身なりを整える その姿を見て一人笑む。

可愛い顔をして その癖驚くほど牙をむく…それなのに・・・


「新ちゃん…性格はお父さん似って言われなかったぁ…?」
「はぁ?」
「だって新ちゃん・・・すごく『お人よし』だもんなぁ・・・銀さん心配・・・」




そう・・・まるで 鬼ごっこ

逃げるこの子を追いかけて
追い詰めて追い詰めて

それでも 懐かないこの子を 俺色に染め抜く


それが    心を 満たして 仕方がない・・・・・・




END


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