「お願いがあるのなら それ相応のお礼をするヨロシ!」

そうニヤッと笑う神楽に新八はうぐっと声を詰まらせる。

「『そんだけ』のことをやるんだから、それ相応の『礼』を用意してもらわなきゃ割に合わないアル!舐めんなよ!」
「う〜・・・な・・・何が欲しいんだよ!言っとくけどねぇボクはお金なんか持ってないからね!」

そう睨みつける新八に、神楽がワザとらしくはぁと大きなため息を吐く。

「本当にお前は眼鏡アルな〜!」
「なんだよ!なんで『眼鏡』が悪いんだよ!世の中の眼鏡っ子に謝れ!」
「アタシ『金』で動くような安い女じゃないネ!もっといいもんよこせって言ってるアル!」
「だから何が欲しいの!酢昆布?それとも定春の餌?」

そう新八が詰め寄ると、ニヤッと神楽が笑う。
その笑みに思わず新八の顔が青くなる。
この顔をする時の神楽は・・・・ろくな事を云わない・・・。




「簡単アル!一発ヤらせろよ!眼鏡!」




***


どうしてこんなことになったのか・・・・。

新八はそう自己嫌悪に駆られながら、神楽の激しい口付けを受けた。
小娘の癖に巧みに舌を差し入れて、新八の口の中を楽しげに犯してくるこの娘はこの上なく手慣れている。

声なんかだしてたまるか・・・!となけなしの理性にしがみ付けば

「お前本当に男アルか?厭らしいアルなぁ・・」

そう神楽はにやっと笑う。――その表情に新八は内心げんなりとした。

子は親に似ると言うが…この憎らしい顔は本当に『アイツ』にクリソツだ・・・。
そうあのマダオの天然パーマ・・・。

昔から子は親の悪い所しか似ない! と聞くが、本当にそうだ。
この激辛チャイナ娘は、まさに父親(天パの方)に似て、こっちばっかり無駄に器用で達者だ・・・。

(卵がけご飯しかできないくせに・・生意気なんだよぉ!)
と頭の中で突っ込みながらも、新八はどんどん追い込まれていく。

神楽は驚くほど手際よく新八の袴を脱がしながらも、ちゅっと首筋に口付ける。
ひくりと新八の体が反応すると、その度に神楽の唇がにやりと笑う。

「新八はエロいアルなぁ・・・」
(うるさいよ!エロガキ!!)

そう頭の中でツッコミを返し、神楽から与えられるその余韻の飲まれないようにと ぐっと唇を噛む。

(だいたいッ・・・)


こうなったのもなにも、全て天然パーマの所為だ!

と新八は思わず漏れそうになる声を必死に殺しながら ここにいないその人物に悪態を吐く。


そうあいつ・・あのセクハラ上司!!!




【 罠 そして果実 】


――ここ数日新八は悩んでいた。


ここ数日だけではなく、もう何か月も悩んでいた・・・。

銀時にされる・・・・・数々の『セクハラ』に!


銀時と初めて会い、そしてこの万屋に働き始めた頃から それは始まった・・・。

「新八ぃ」
とにたぁと笑い、銀時は何かと新八に触りがるのだ。


最初は頭を撫でたり頬に触れたり肩を抱いてきたりと・・・その程度ですんでいたのだが
時間が経つにつれ、それは抱きつきに変わり、唇を撫でるようになり 尻を触るようになり
しまいには度を越した痴漢行いをするようになった!

例えば神楽が出かけ、完全に部屋に二人きり状態になると音も無く寄ってきて、強引にキスしてくる。(新八の弱い抵抗など何の役にも立たず 銀時にされるがままになる)
それももちろん普通のキスじゃない・・・・・・・・・・・・・・。

暴れて喚く自分を組み敷いて、にたぁとムカつく笑顔を浮かべて服の中に手をいれて 行為に及ぼうとする。
とうか・・・あいつはすでに強姦罪だ…。


日を増すごとに歯止めが利かなくなるそれらの行為は 新八に大きな危機感を持たせていた。

人目が無い時、二人きりの時、銀時は新八を強引に捕まえて行為に及ぼうとする。
新八がどんなに口で言っても態度に示しても一向にそれは止まない。
むしろ銀時は新八が抵抗するその行為自体に興奮するらしく、さらに新八を追いまわすようになる。

正直 うんざりしている・・・。

だいたい・・・と新八は天井を睨む。

自分は男だ。
そりゃ家事とか掃除とか裁縫とかばっか得意で、女性にモてなくて気の利いた会話もできないが
女の子に興味のある 青春真っ盛りの少年なのである。

ぶっちゃけて銀時の嫁みたいに周りに言われてるけど 冗談じゃない!
昔姉に女の子のカッコさせられていた過去もあったけど!!!それはもう過去の事!
ぱち恵として男に襲われそうになったこともあるけど それは一時の間違い!!

そう!!自分は立派な男だ・・・。侍だ!

こんなこと 間違っている!



・・・・・・間違っているとわかっているが・・・、新八は銀時から逃れることができない。

銀時は新八より体が大きく腕も長く、腕っぷしも鬼のように強く
おまけに変態でスケベでダメ人間で・・・・・。

どんなに暴れて逃げようとしても、銀時にとっては赤子の手を捻るのと同じこと。
最悪なことに新八が喚いて反抗すればするほど、銀時の中の『S』が覚醒するらしく、気がつけば足腰立たなくなるくらいにされてしまう・・・。


(イカン!こんな青春駄目だ!!ケジメつけて銀さんにもわからせないと!!)

新八はそう拳を握り締める。

だが所詮・・・新八の力でできることなんて限られている。
たとえ逃げ回ろうとしても、銀時の力の前ではあっけなく無力になり組み敷かれてしまうし
ぎゃんぎゃん説教し、噛みついても 銀時はさらに S を目覚めさせるだけ・・・
かといって逆を突いて銀時の嫌いな積極的な行動に出ようものなら 新八ならウェルカム!と言わんばかり待ち構えられている。

まったくの逆効果・・・

だが、そこで新八は思いついたのだ・・。・

そう・・・味方を作ればいいのだ!!
新八一人の手で余るのだから、強く頼りになり、銀時の前に立ちはだかってくれる強い味方をつくればいい!

そしてうってつけの人物が 幸運なことにすぐ傍にいるのだ!


そう・・・銀時に力で勝り 口でも勝り 行動力でも勝 非常識な部分も勝る身近な人物・・・
それは――― 夜兎出身の神楽である!



実は神楽がいる時、銀時は(それほど)セクハラをしてこない。
特に露骨なセクハラ…キスや痴漢行為は絶対しない・・・。

流石の銀時もお子様にこの行為を見せることは躊躇しているようだ・・・。
そこを利用するのだ。


神楽に傍にいてもらうだけでもいい。
そして出来るだけ銀時と二人きりにならないようにする・・。


万が一強引に事に及ばれそうになったとしても、神楽がいれば銀時だってぐぅの音も出ないはずだ!



「お願いだからね 神楽ちゃん!ホント頼むよ!」



服を掻き合わせ頬を紅潮させ、息がまだ整わないなかその瞳を潤ませて 新八は畳み掛ける。

「約束守ってよ!」

とはいえ、女の子・・しかも子供相手にこんなことをされる自分にどう突っ込んでよいのか分からないが もう手段を選んではいられないのだ。
すると、このテクニシャンの小娘は ニヤッと笑う。

「任せるネ 新八!もらった『礼』分はきっちり働くネ!」


**


『作戦実行結果 その1』


新八はソファに座って、たまった洗濯物を畳んでいた。
近くには定春が寝そべり、そして神楽はそんな定春に寄り添って酢昆布を蜜柑を頬張っている。
そして問題の銀時は、ちゃっかりと新八の隣に座ってジャンプを読んでいた。

ぶっちゃけて昨夜から 新八は銀時の接触を絶つことに成功していた。

新八の作戦は見事に当たり、なるべく銀時と二人きりにならぬようにし、神楽といるだけで銀時はセクハラをする機会を奪われたようで手を出してこない。

相変わらずあの口調で、言葉的なセクハラや世迷いごとをボヤイテいるが、放送禁止になるほどの発言はしてこない。
どうやら神楽の存在にかなり気を使っているらしい・・。

強引に接触を奪われた当て付けか、時折銀時がそのどんよりした眼でこちらをちらっと見ているのを感じる。
というか、あからさまにちらちらと視線を送ってくる・・・。だがそれを完全に無視する。


(いける・・・!いってやる!)


新八はぐっと心の中で拳を握り締める。

そんな時だ・・・


銀時が すっと 手を伸ばしてきた。


(そうはいくか!)

眼の端でそれを捉えた新八はさっとその手を交わし そそくさとソファから立ちあがる。
そして、銀時の手は空しく空を掴む。


「・・・えっと〜これしまいに行かなくっちゃ」


そうぎこちなく言いながら歩き出す背に、銀時の粘り付く様な視線が追ってくるのがわかる。

例え些細なおさわりでも、断固避けるべきだ!
ここで甘い顔をするから銀時がいい気になるのだから・・。
全てを完全にシャットアウトするのだ!


空しく空を掴んでいた銀時の手は、暫くして銀時の猫っ毛に戻された。


「てかさぁ・・・神楽あれ・・?今日遊びにいかねーの?」


唐突に銀時は蜜柑を頬張る神楽にそう尋ねた。

「いかないネ・・・最近外飽きたネ」
「あんだおめーぇ・・・?その年でヒッキ―気取ってるワケ・・・?」
「違うネ 今日は家にいたい気分ネ」
「神楽ちゃ〜ん 見てほら 外すげ〜天気だよ〜楽しそうだよぉ〜」

(バレバレなんだよッ!!下心が!)

新八は心の中でそツッコミながら箪笥にせっせと服を入れていく。

「煩いネ 天パ!」
「あんだとぉ・・・おめー何?今頃反応期かコノヤロー」

そうボヤキながら 銀時が不意に立ち上がりのらりくらりと近づいてくる。

そしてまた伸ばされる手・・・。

「あ〜手伝お〜か 新ちゃん」
「いえ 結構です!これで終わりですから」

にっこり微笑んで 新八はまたそそくさと離れる。
銀時の手はまた虚しく空を掴んでいる。

どんよりとした眼が新八を追う。

「・・・ねぇ新八ぃ・・・」
「新八!!ちょっと来るアル!」

銀時が何かを言う前に神楽の声が割り込む。

「お通が出てるアル!早く来るヨロシ!」
「えっ本当!!」」

新八が矢のように飛びテレビにくぎ付けになる・・・。

「・・・・」

そんな二人を銀時が なんとも言えぬ表情で眺めていた。


**

『作戦実行結果 その2』

新八は台所に立っていた。
皆の昼食をこしらえていたのだ。


「よし!おいしい」


そう笑んだ瞬間、不意に新八の体がびくりと強張る。――突如後ろから 強く抱きしめられたのだ。

(え・・・?あれ?だって全然気配しなかったのに!)

ぎゅっと強く抱きしめてくるのは間違いなく銀時だ。
いつのまにこんなの傍にいたのだろう・・・。
新八は思わずごくりと息を飲んだ。


「新八ぃ・・・」

銀時のねっとりとした声が耳に吹き込まれる。

「・・・っ!」
新八の体が突如びくりと震える。銀時の唇が首筋に触れたからだ・・・。
思わず反抗し、逃れようとするが銀時の手がそれを許さない。
強い力で抱き込まれて、身動きできない。

「・・・っ!」
思わず声を上げて神楽を呼ぼうとするが、瞬時に大きな手で口を塞がれる。

「ん〜〜っん〜〜!」
身を捩ってなんとか逃れようとしても、銀時はびくともしない。

銀時のねっとりとした舌が 首筋を嘗め上げてきて、体の奥が熱くなる
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜!」
がくがくと足が揺れる。

それを見越した銀時の手が 新八の着物の中へ滑り込む。


「〜〜っ〜〜んぅ!」


「何やってるアル?銀ちゃん・・・!」

「・・・・・・」

唐突に聞こえた声に、ピタリ と銀時の手が止まる。
そして銀時の眼が果てしなくダルそうに 声の主を見る。

そこにはくちゃくちゃと酢昆布を噛みながら立つ神楽がいた。

「何やってるアル?10文字以内で簡潔に述べるヨロシ・・・」
「・・・・無理」

**


『作戦実行結果 その3』


「新ちゃん 『二人きり』で買い物いくぞ!」

唐突に銀時が言い出した。
その手にはすでにヘルメットを持っている。

だが銀時の顔をみた新八は思わずぎょっとする…。

銀時の目が・・・血走っている。

「てか行く!絶対行く!もう決めた!銀さん決めたからコレ!はい持ってコレ!」

銀時はそうぐいぐいとヘルメットを押しつけてくる。

「決めたから銀さん!マジだから!キャンセルとか受け付けないから!」
「意味分かんねーよ!てか行きませんよ!」
「上司命令だ!行くんだよ!行かなかったら減給だ!」
「ろくに給料払わないくせにえらそーなんだよ!!てか行きませんからね!!買う物もないし!」
「ありますぅ〜銀さんのチョコレートとかパフェとか糖分とか糖分とか糖分とか・・・」
「てか、全部アンタの私用じゃねーか!一人でいけよ!」
「ばかッ・・おま!新ちゃんと行くの!行かなきゃ意味ねーの!!!」


「じゃあアタシもいくアル」



「いや・・・神楽ちゃんはいいから・・・無理しなくていいから ほらあれだよ 日差し強いし」


銀さんが神楽を見て汗を浮かべる。

「何言ってるネ。外は雨アル…ちょうど酢昆布買いたかったから丁度いいネ なぁ新八!」
「も・・もちろんだよ!じゃあ三人行きましょうか?ねぇ銀さん!」
 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


**

『作戦実行結果 その4』



「・・・新八 送ってくわ!決めたから 銀さんマジだから!!」
そう仁王立ちする銀時の顔は眼が血走り、血管が浮かび上がってる。

「いや・・・・・結構です」
「結構じゃないから・・・もう決まってるから!もう一週間前から決めてたから 銀さんマジだから!!!」
「あの・・・」
「いいから早くこっちに来なさい!!早く!!一刻も!あと10秒だから」
「いえ・・・だから結構ですから」
「あっ!神楽お前はお留守番だ!上司命令だから!これ破ったら減給するから!!!!」
「人の話を聞けッ―――!!!」




「あら銀さんこんにちわぁ・・・丁度よかったわ新ちゃん」
「あ・・姉上」
「今日仕事が早く終わったから一緒に帰ろうと思っていたの 良かったわ擦れ違いにならなくてv」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



**


銀時からのセクハラを受け流すこと三日・・・。
新八は確かな手ごたえを感じ始めていた。

(いける・・いけるよこれ!!)

銀時があの手この手を使って新八との触れ合いを望んでいても、かなり高い確率で防げている。
やはりあの非常識を、更に上回る『ド・非常識』の神楽が相手では手も足も出ないらしい。

神楽に頼んで正解だった!
そりゃ・・報酬の事考えれば 銀時のセクハラを回避している意味があるのかないのか分からないが・・・。

(いやいや・・・これ前進だよ!いけるよボク!!)

流石に激しい妨害に合い続けた効果が出たようで、三日目になると銀時が大人しくなった。

意気消沈として、燃え尽きたようなどこかやつれたような顔をしている・・・気がする。
いつも魚の死んだようなやる気の欠片も見えない眼をしているから分かりにくいが
眼の下に若干隈のようなものが見える・・・・気がする。

なにわともあれ・・・神楽の攻撃に かなり応えているらしい。


(どうして早く行動に移さなかったんだろう? 我慢なんてしないで早く頼めばよかったんだ・・!)


新八は心の中で大きくうなずく。

今までがおかしかったのだ…。
そう 今までが!!




「俺…ちょっと出かけてくるわ」



果てしなくダルそうな声が聞こえ振り返ると、そこには遠い眼をした銀時がいた。

「え…?出かけるんですか?」

新八が尋ねると 銀時は隈の浮いた眼のまま のそのそと足を進める。

「あ〜・・今日遅くなるわ・・たぶん10時回る・・・ じゃあな」

銀時はそう、しゃがれた声で言い残し、ひらひらと手を振って出ていった。

バタンと戸が閉まり、銀時の姿が消えた瞬間 新八と神楽は咄嗟に顔を見合わせた。



「見たアルか!?あの顔!アイツ相当堪えているようネ!こりゃ来たぜぱっちゃん!」
「うん!すごいよ神楽ちゃん!『あの』銀さんがあんな顔してるよ!!これいけるよ!ボク達!ありがとう!」
「ふふ任せるがいいヨロシ!!アタシに掛かれば銀ちゃんなんてチョロイネ!」
「流石!神楽ちゃんは頼りになるよ!」

がしっと手を組んで、二人でにやぁと笑う。


「じゃあ新八!今日はもう大丈夫アルな?」
「え・・・?」

突然の言葉に新八がきょとんとする。

「実は今日 真撰組のあのくそガキと決闘する約束してるネ!激しい戦いになるから遅くなるネ!!!でも銀ちゃんも遅いから大丈夫アルな」
「え・・?決闘?すんの・・・?沖田さんと?マジですか?」
「マジアル!あいつにはいろいろ借りがある!ここで一つ決着付けるネ!」
「・・・へぇ・・・」

この怪力娘と真撰組のドS王子が巻き起こす決闘がどんなものになるか想像し、思わず青ざめながらも新八は頷く。

「・・・そうだね あっ銀さんの事は大丈夫。帰りは10時過ぎって言ってたしその頃にはボクも帰ってるからさ」
「そうアルな・・・。んと、いま2時か・・・まぁ8時までには帰るネ!」
「わかった あんまり遅くならないでね!あと、あんまり周りのモノ壊しちゃ駄目だよ!」


『おう!』と傘を振り回し、定春と共に出てく神楽を見送りながら新八は はっとした。


そうだ・・・
つい自分の事で頭がいっぱいになってしまって気がつけなかったが、ここ最近神楽は外に遊びに行くことができなかったのだ。
新八のお願いごとの所為で・・・。

(悪いことしちゃったなぁ…)

そう思いながら新八は 神楽が食べ散らかした後を片付け始めた。

(でも銀さんいつもボクの半径1メートルくらいにいるしなぁ・・・てか外出行くっていってもスーパーとかしか行かなかったから・・・・
神楽ちゃんつまんなかったよね・・遊びたいざかりだし・・・)


(でも 銀さんだいぶ大人しくなったし・・・ボク一人でいても前みたいに痴漢的な行為がなくなったし・・こう条件反射的に神楽ちゃんを恐れてるから ・・・・これからは大丈夫かも)


そう思った時だった・・・。



「ただいまぁ・・・・」


聞こえるはずの無い声が聞こえて 新八はぎょっと振り返った。
そこには――銀時が立っていた。


「あ・・・あれ?どうしているんですか・・・?」
「何よ?いちゃ悪い?ここ銀さんの家なんですけどぉ」
「・・・は・・ぁ・」

そりゃそうだ・・と思いつつ、新八は内心焦る。

だって予定外だ…。
こんなに早く、銀時が帰ってくるなんて…。

部屋は・・・完全に二人っきりの状態だ・・。
しかも唯一の出口は銀時によって塞がれている。
更に神楽は――夜8時まで帰らない・・・。


――だが 

銀時は神楽が遊びに行っていることは知らない。
今までの経験から、いつ帰ってくるかと気にするはず・・・。
神楽は20時には帰ってくると言っていたし、その間このまま白を切り通せば 銀時はなにもしてこないだろう・・・と自分を落ち着かせて新八は笑顔を張り付けた。


「そうですよね。ここは銀さんの家ですもん。いつ帰ってきてもボクが文句言う筋合いはないですよね」


なんとなく、視線を逸らしてゴミを捨て、机を拭く。

「・・・・・・でも・・今日は飲みに行かなくていいんですか?あっそれとも忘れも・・・・」
「本当にさぁ・・お前らガキだわ・・」



新八の言葉を遮って、くすと笑う声がした。


「え・・・?」

その意味を測りかねて新八は顔を上げる。―――同時にぞっと背筋を凍らせた。



「ばか正直に何でも信じちゃいけねぇ―て 父ちゃんや姉ちゃんに教わってこなかったのか?お前・・・?」



そうくつくつ笑う銀時の顔は、いつもとは違う・・・。
どんよりとした赤茶色の眼が、まるで獣のようにすっと細められて新八を射抜く。


その眼で射抜かれた瞬間、新八の体からじわっと嫌な汗が滲んだ。


「新八は昔からいい子なんだけどぉ・・・銀さんそう言うとこ結構心配なんだぜ?」

くつくつと銀時は笑い続ける・・・。

「・・・あ・・・の・・神楽ちゃん」
微かに震える唇に咄嗟に誤魔化しの嘘が口から毀れるが・・・

「さっき神楽が喜び勇んで出かけてくのみたぜ 銀さん・・。帰り8時くらいなんだって・・?いいねぇガキは元気で」


銀時は聞いていたのだ…全てを。
最後の盾が砕けて新八は思わず言葉に詰まる。


「・・・ねぇ新ちゃん・・・新八くーん」

銀時が酷く優しく・・・そして冷たく名を呼ぶ。

バタン・・・と重く扉が閉まる音がする。


「銀さん・・・怒ってるんだぞ・・コノヤロ―」


ゆっくりと だが確実に近づいてくる銀時の顔は 残酷に笑む・・・・


「3日も新ちゃんに触れられなくて・・・マジでノイローゼ気味だっつの・・・」


そう囁く銀時はペロッと己の唇を嘗める。
その仕草がまるで『獣』の様で、新八は思わず一歩下がる。


咄嗟に逃げ道を探し、視線を彷徨わせるが銀時よってそこは閉ざされている。


「何その顔・・・?また逃げようとか考えちゃってる・・・?」


すべてを見透かしたかのように にやっと笑う銀時にギクっと体が強張ってしまう。
それを見た銀時がまた唇を歪める。

「たくよ〜新八く〜ん。そのわかりやすい癖直さないと バレバレだよ・・・まぁ銀さんは好きだけどねぇ・・・可愛くて」

(またこの人は・・・そんな事をさらっと・・・)

と思うものの、新八はじりじりと後差ずるしかできない。
銀時は笑っているものの・・・実は果てしなく機嫌が悪いということが 新八にはわかる。

でも・・・負けるものか!


「あ・・・あのねぇ前から言いたかったんですけど、ボクはもう嫌ですから!」
我ながら声が震えるのがわかり情けない・・。
「嫌?何が?」
あからさまにわかってるくせに、この男はそう首を傾げる。
「だ・・だから、銀さんがボクにしてくるセクハラ行為ですよ!」
「あっ嫌なの?へぇ〜銀さん知らなかった」

銀時はそうワザとらしく驚いた顔をする。

――知らないはずなんてないくせに!
どんだけ反抗して喚いてるか見ているくせに!
それなのにこうしてはぐらかす・・・。この男はいったい何なのだろう・・・!

「いやぁ・・観察力が足りねーかな?俺・・・?いや反省しなきゃなぁ・・・」

(そんな事絶対思ってないくせに!!天パ!)

思わず睨んだ瞬間、銀時がうっとりとした顔をするのを見て新八はしまったと思う。



「いやぁでもよぉ・・・ヤってる時に新ちゃん なんてーの・・・すっげぇ気持ちよさそうてゆーかぁ・・・」

銀時の言葉に、新八はカッと眼を見開く。

「違う!そんなんじゃねーよ!」
「あれ?知らなかったの?なら今度鏡の前でヤろーか?いいねぇ・・銀さんそういうプレイもすげぇ興奮する」


「うるさい!変態パーマッ!」

顔を真っ赤にして、反抗心丸出しで新八が睨む。
その瞬間――

銀時の顔はまた得体の知れないうっとりとした表情を浮かべている。

そうだ・・・。
新八のこの態度がますます銀時の『S』を煽ることになっている。
それは分かっている・・・わかっているのに、どうしても新八は抑えることができない。

だからこうしてまた、噛みつく様な顔をしてしまう。

「なにその反抗するよ―な顔・・・?」

銀時がにたぁ・・・と笑う。
「なに?違うってか?違わないよね?だって新ちゃん すごい厭らしい顔して腰振って・・・」

かあぁああああああああああああああ!

瞬時に新八の顔が赤く染まる。
恥ずかしさと屈辱と男としてのプライドとなんやかんや いろんなものがごちゃまぜになり思わず瞳が潤む。
唇を噛みしめて眉をしかめて そんな顔を見せるのが嫌で顔を背向ける。

その瞬間肌で感じる・・・。
銀時の口が楽しげに 歪むのを・・・。


「・・・あ〜・・・その顔たまんねぇ・・」


ぽそっと 独り言のように毀れた言葉が新八を震わせた。
銀時の唇がにやっと歪む。
どんよりとした眼が 獣のように微かに見開かれる・・・。

逃げたい
ここから
銀時から逃げたい・・・。

新八はじりじりと後ずさる。
それを楽しげに銀時が追う…。


新八が眼を逸らせば逸らすほど、銀時はそれを絡め取ろうと追ってくる・・・。

「新ちゃんのその顔だけで…イけそうぉ」

くつくつ笑うその言葉に、屈辱で腹から怒りが込み上げる。
咄嗟に視線を上げて睨みつけると、目の前に銀時の顔があり思わず竦む。

獣のような顔をするこの男…。
追い詰めた獲物を見て、悦んでいる。


新八と銀時の間にはすでに僅かな距離も無い…。
触れようと思えばすぐ触れられるくせに、銀時は触れようとしない。

絡みつくような視線で新八の顔を眺めて少しでも動けば唇が触れてしまいそうなほど顔を近づけ、ギリギリのラインその動きを止める。
この男は、追い込まれた新八の反応を楽しんでいるのだ・・・。
追い込まれても、尚屈しない新八の姿を・・・。

「あれ?新ちゃん顔赤くない?てか震えてるぅ?」
「・・・ッ」
「え・・?なに?あーゆーネタにまだ過剰反応しちゃうの?どこぞの純情ボーイですかぁ?」
「う・・・うるさいんだよ!離れろよ!」

(ば・・ばかどもるな!これがあの天パをますますいい気にしちゃうんだから・・!)

なのに 震える唇はうまく言葉が言えない・・。
「ちょっと近いです!は・・離れてください!ボク買い物に行きますから!」
「却下ですぅ・・。認めませ〜ん」
「うっさい!離れろ!」
「おいおいぃ・・・仮にも上司の俺にそんな口の聞き方はねーだろぉ?あれだな・・・一回ちゃんと教育し直さないとダメだなぁ」
そうにやっと笑い、銀時の手がそっと新八の頭を撫でる。

「きつ〜〜く ねちっこく 教育し直すかぁ・・」



「・・・もうボクに触れないでください!」
「嫌だね・・無理」
「う・・うるさいんだよ!ボクは男だ!こんなこともうしたくねーんだよ!」

「銀さんはしたいしぃ・・。もう新ちゃんとヤりたくてヤりたくて 頭ん中89パーセントはその事・・ちなみに残りは糖分ね」
「聞いてねーんだよ!!天パ!!・・・ッ」
「ふ〜ん」

銀時のねっとりとした声がする・・。

「大体ねぇ・・ヤ・・・その『したい』んなら そういう店とかいきゃいいじゃん!てかあの変態マゾクノイチとすればいーじゃん!!!」
「うわ・・っ 絶対無理・・今萎えた・・・ちょっと萎えたよ今!どうしてくれんだよ新八くーん」
「知るかボケ!とにかくボクはもう嫌なんです!無理なんです!・・・大体ボクは」
「ハイ スト―プ 新八君」

そこで銀時はすっと口に手を当てる・・。
その意味は 「喋るな」


「その先の事言ったら 許さないよ・・・」
「・・・え?」

「その先の事聞いたら、銀さん狂っちゃうよ・・・。んで・・・新ちゃんに酷いことするよ もうドメスティックバイオレンスしちゃうよ・・・」
淡々と呟く銀時の姿に、ぞっと新八の背が冷たくなる。

「許さないっていったよね・・俺。・・・マジで許さないから・・・」

「銀さ・・」


「てか、今回のだってさ・・かーなーりキテルから・・・ちゃんと責任とってくれや・・・新八ぃ」


***

**


「なぁ・・新ちゃん もうやめてよ こういうの」

銀時はそう囁きながら、そっとその体を抱き込む。
体中に紅い印を刻み付けた白い体の主は無言のまま背を向け返事をしやしない。
そんな反抗的な所にまたこうしてハマってしまう・・・。

「銀さん ほんとノイローゼ寸前だったんだからな コノヤロー わかってんのか?」
「・・・」
「わかってますかぁ〜?おいコラ!新八君〜」

「はいはい・・・すいませんでしたねぇ」

暫くの沈黙の後、反抗的で刺々しい言葉が返る。
それが 銀時をさらに煽るとも知らないで・・・。

「おま・・・本当にわかってるの?ねぇちゃんと聞いてた 銀さんの話ぃ!」
「煩いよ!あんた・・・自分が何したのかわかってんのか!!」

応えた声に銀時はにやぁと笑う。
「わかるよ きつ〜〜く濃く マニアックなSMプレイしましたぁ」
そう言えば、抱きしめた小さな体は耳まで赤く染まる。
それがなんて可愛いんだろうと銀時はうっとりとする。


「うるせーーよ!!!あんた最低だ!」
「うわぁ・・新ちゃんまたそんなこと言っちゃう?あれ?さっきのじゃお仕置き足りなかったかなぁ・・・?」
そう意地悪く囁くと、抱き込んだ体が硬くなる。

ずいぶん虐めてしまった。
だって新八があんまりにも反抗的で屈しなくて そこがたまらなく銀時を欲情させたから。

「新ちゃん・・・一つ聞いときたいんだけど、ただのセクハラでこんなことしてるって まだ思ってるの?」
「それ以外何があるんですか・・・」
「だからもう何回も言ってんだろ?銀さん新八が好きで好きで もう愛しちゃってんの・・。
愛するとさ相手の体欲しくなるだろ?触りたいだろ?もう苛めたいだろ?もう追い詰めて泣かせたいだろ!?」
「そう思うのはあんたが変態のS だからだろーが!」
「いやいや・・・マジな話銀さんこんなにも新ちゃんが好きなんですけど・・・」
「寝言は寝てから言ってください…」
「だから本当…新ちゃん本当に銀さん新ちゃんが大好き!すげぇ好き」

あ〜〜はいはい

とまったく相手にしてくれない少年に覆いかぶさって銀時は続ける。


「じゃあどうすれば信じてくれんだよ てめーはよぉ・・・。男相手にこういうことするって好きだからに決まってるだろ?それ以外理由ないでしょ?」
「銀さんの特殊な趣味の所為じゃないんですかぁ?この前病院で服部さんとも変なことしてたじゃないですか・・・」
「ばっ・・あれはチゲーよ!あのクノイチがあいつの肛門に蝋燭入れてそれを取れって言うから そしたらよぉタイミング悪くお前らが」
「どーでもいいですけど・・・神楽ちゃんの前であーゆー教育に悪いこと止めてください 一応女の子なんで」
「だからちがうって 銀さん好きなのは新ちゃんだけですから」



あ〜〜はいはい

少しも振り向く気配がない少年の首筋に 銀時は切なく唇を寄せる。

「いいも〜ん・・・銀さん勝手に新ちゃん好きでいるからよぉ」
「いや・・・迷惑なんで」
「うわっ・・・ひど・・・」


「そういえばさぁ・・・・・・一つ聞いていい?神楽にどうやって言うこと聞かせたの?酢昆布?定春の餌?」

そう訪ねた瞬間…新八の体がぎこちなく固まる。

「・・あれ?・・・・ねぇ新ちゃん・・・まさか」

銀時の顔が 青ざめる

「ねぇ・・まさか・・・え?マジ」

「・・・・・」


「さぁ第二ラウンド行くとしますか・・・・・・・スンごく濃いので!」





「ふざけんなぁあああああああああ!」


END



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